「want to play? それとも want playing?」「enjoy to watch? enjoy watching?」── 動詞の後ろに続く形として、英語には to + 動詞の原形(to 不定詞) と 動詞の -ing 形(動名詞) の 2 種類があります。どちらも日本語にすると「〜すること」と訳せてしまうため、日本語話者はどちらを使うべきか迷いがちです。
実はこの 2 つの形には、まったく違うコアイメージ があります。to do は「これから・未来・方向」、doing は「既に起こっている・継続・イメージ化」。このイメージを掴めば、丸暗記せずに使い分けの勘所が見えてきます。この記事では、コアイメージ → 動詞タイプ別の使い分け → 意味が変わる動詞 → 前置詞との関係 → 誤用、の順に整理していきましょう。
核となるイメージ ― to = 未来志向、doing = 既起・継続
まずは同じ動詞 play を使った 2 文を見比べてみましょう。どちらも「テニス」を目的にしていますが、伝わる感覚はまったく違います。
I want to play tennis.
私はテニスをしたい。
I enjoy playing tennis.
私はテニスをするのを楽しんでいる。
最初の文 I want **to play** tennis. は「これからテニスをしたい」という 未来への方向 を表します。一方、2 つ目の文 I enjoy **playing** tennis. は「テニスをすること(という体験)を楽しんでいる」という 既に起こっている・続いている 感覚を表します。
下の図は、to do と doing の核イメージの違いを可視化したものです。to do は矢印が前方に伸び(これから起こる)、doing は円環でループ(すでに起こっている・続いている)している、と捉えてください。

| 形 | コアイメージ | 代表的な訳 |
|---|---|---|
| to + 動詞の原形 | 未来志向・これから・方向 | 〜すること/〜するために |
| 動詞の -ing 形 | 既起・進行中・一般化 | 〜すること/〜していること |
to do は「これから・未来・方向」を、doing は「既起・進行中・一般化された体験」を表します。訳ではなく 時間感覚 の違いとして捉えると、使い分けの判断がしやすくなります。
動詞で決まる ― 目的語に取るのはどちら?
多くの動詞は、目的語として to do か doing のどちらか一方しか取れません。これはコアイメージに連動していて、「未来志向の動詞は to do」「既起・継続・回避の動詞は doing」を取る傾向があります。
下の図で 3 つのタイプを一覧してから、それぞれを例文で確認しましょう。

タイプ 1: to do のみ取る動詞(未来志向)
want / hope / decide / plan / promise / expect / agree / offer / refuse / wish などは、「これからすること」を目的にする動詞 です。すべて to do を取ります。
I decided to study English.
私は英語を勉強することに決めた。
He promised to help me.
彼は私を手伝うと約束した。
I hope to see you soon.
すぐにあなたに会えたらと思う。
decide(決める)・promise(約束する)・hope(望む)── いずれも これから起こす行動 に向けての宣言・期待です。to の矢印が「未来に向かう」イメージと一致しています。
タイプ 2: doing のみ取る動詞(既起・継続・回避)
enjoy / finish / stop / avoid / mind / admit / deny / give up / practice / suggest などは、「既に起こっていること/起こったこと/一般的な行為」を目的にする動詞 です。すべて doing を取ります。
She enjoys reading mystery novels.
彼女はミステリー小説を読むのが好きだ。
Have you finished eating?
食べ終わった?
He avoided meeting her at the party.
彼はパーティーで彼女に会うのを避けた。
enjoy(楽しむ)・finish(終える)・avoid(避ける)── いずれも 既にある行為 を対象にしています。doing の「円環・継続」イメージと一致します。
タイプ 3: 両方 OK で意味が(ほぼ)変わらない動詞
like / love / hate / begin / start / continue / prefer などは、to do と doing の 両方を目的語に取れて、意味もほぼ同じ です。
I like to swim in the ocean.
私は海で泳ぐのが好きだ。
I like swimming in the ocean.
私は海で泳ぐのが好きだ。
どちらも「泳ぐのが好きだ」と訳せます。ただし英米のニュアンスでは、to do は特定の機会を、doing は習慣・一般論を指す傾向 があると言われます。迷ったら doing を選ぶと自然な英語になりやすいです。
- to do のみ: want / hope / decide / plan / promise / expect(これからの行動を宣言)
- doing のみ: enjoy / finish / stop / avoid / mind / practice(既に起きている行為)
- 両方 OK: like / love / hate / begin / start / continue(どちらでも可)
to と doing で意味が変わる 4 動詞
ここからが最大の難関です。remember / forget / try / stop の 4 動詞は、後ろに to do が来るか doing が来るかで 意味がまったく変わります。コアイメージ(to = 未来/doing = 既起)に照らすと、ルールが見えてきます。

remember ― 「これからすることを覚えている」vs「過去にしたことを覚えている」
I remembered to lock the door.
私は(忘れずに)ドアを閉めた。
I remember locking the door.
私はドアを閉めたことを覚えている。
前の文の remember to lock は「(これから)ドアを閉めることを覚えている=忘れずに閉める」で、未来の行動を思い出しています。後の文の remember locking は「(過去に)ドアを閉めたことを覚えている」で、すでに起こった出来事の記憶です。
forget ― 「これからすることを忘れる」vs「過去にしたことを忘れる」
She forgot to send the email.
彼女はメールを送るのを忘れた(送っていない)。
She forgot sending the email.
彼女はメールを送ったことを忘れている。
remember と同じ構造です。前の文の forgot to send は「(これから)送ることを忘れた=送り忘れた」。後の文の forgot sending は「(過去に)送ったこと自体を忘れている」。
try ― 「〜しようと試みる」vs「試しに〜してみる」
He tried to open the window.
彼は窓を開けようとした(開かなかったかもしれない)。
He tried opening the window.
彼は(試しに)窓を開けてみた。
前の文の try to open は「開けようと努力する(未来への試み)」で、実際には開かないこともあります。後の文の try opening は「試しに開けてみる(既起の行為をやってみる)」で、行為自体は実行されます。
stop ― 「〜するために立ち止まる」vs「〜するのをやめる」
He stopped to smoke.
彼は煙草を吸うために立ち止まった。
He stopped smoking.
彼は煙草を吸うのをやめた(禁煙した)。
これは特に注意が必要なペアです。前の文の stop to smoke は「立ち止まって煙草を吸う=喫煙する ために 止まる」(to 不定詞の副詞的用法で、目的を表す)。後の文の stop smoking は「喫煙を やめる」(doing が目的語)。意味が正反対になるので要注意です。
to do が来ると「これから・未来」、doing が来ると「すでに起こった・続いている」を指します。remember / forget / try / stop は、後ろの形で 行動の時点 が変わると覚えましょう。
前置詞・主語・補語での用法
動詞の目的語以外の場所でも、to 不定詞と動名詞は登場します。この章では、前置詞の後・主語・補語・形式主語 の 4 つのパターンを整理します。
前置詞の後ろは必ず動名詞
after / before / without / by / of / about / for など、前置詞の後には必ず動名詞(doing)が来ます。to 不定詞は使えません。

She left without saying anything.
彼女は何も言わずに立ち去った。
「〜せずに」「〜する前に」「〜することによって」のような表現は、すべて前置詞 + doing の組み合わせで作ります。× without to say は誤りです。
注意が必要なのは、to が前置詞として使われる表現 です。例えば look forward to doing(〜を楽しみにする)や be used to doing(〜に慣れている)、object to doing(〜に反対する)の to は 前置詞 なので、後ろには必ず doing が来ます。to 不定詞(to + 原形)ではありません。
動名詞は主語・補語になれる
動名詞(doing)は名詞の性質を持つので、文の主語 や 補語 としても使えます。
Swimming is good exercise.
泳ぐことは良い運動だ。
「泳ぐことは良い運動だ」の主役「泳ぐこと」は、動名詞 Swimming が担っています。to 不定詞(To swim is good exercise.)も文法的には可能ですが、主語としては動名詞の方が圧倒的に自然 です。
形式主語 It is ... to do
to 不定詞を主語にしたいときは、主語の位置に形式主語 It を置き、to do 以下を文末 に回すのが英語の定石です。
It is important to study English every day.
毎日英語を勉強することは大切だ。
It は形だけの主語で、真の主語は to study English every day。長い to 不定詞句が文頭に来ると読みにくいため、英語では形式主語構文が好まれます。
よくある誤用例
最後に、日本語話者がつまずきやすい誤用パターンを 3 つ紹介します。
誤用 1: want の後ろに doing を置く
正しい形:
I want to play tennis this weekend.
今週末テニスをしたい。
want は これからしたいこと を表す動詞なので、to do しか取れません。want doing の形は存在しません。hope / decide / plan / promise なども同様に to do だけです。
誤用 2: enjoy の後ろに to do を置く
正しい形:
I enjoy playing tennis.
私はテニスをするのを楽しんでいる。
enjoy は すでにある体験を楽しむ 動詞なので、doing しか取れません。enjoy to do は誤りです。finish / stop / avoid / mind / practice なども同様に doing だけです。
誤用 3: stop to do と stop doing の取り違え
正しい形:
He stopped smoking two years ago.
彼は 2 年前に禁煙した。
stop to do は「〜するために立ち止まる」、stop doing は「〜するのをやめる」。「禁煙した」は stop smoking で表現します。stop to smoke だと「喫煙のために立ち止まった」という真逆の意味になるので要注意です。
to do と doing の使い分けは、一見複雑に見えますが 「to = 未来志向/doing = 既起・継続」 というコアイメージを掴めば、動詞タイプ別の傾向も、意味が変わる 4 動詞の違いも、すべて同じ原理で説明できます。まずは want / enjoy / stop のような頻出動詞から使いこなせるようにし、徐々に try / remember / forget のような意味分化動詞に広げていきましょう。
